🔻一応この話の続きになります、読まなくても大丈夫です。
ブラック企業に長く勤める人に
どんなイメージを持っていますか?
私はブラック企業にハマってしまう人は、
圧倒的に「良い人」が多いように思うのです。
良い人だから辞められないのです。
色んなモノに縛られてしまうのです。
それは・・・・・義理とか情とか・・・・。
私が3年務めてた会社がクソだったのは、
前の記事でも書いた通りですが・・・
とにかく離職率のクソ高いクソ会社でした。
月収も5万程度で仕事も飛び込み営業と過酷だった為、
月に10人の新入社員が入り、
月に10人の人間が辞めていく程です。
普通はスグ辞めてしまうんです。
しかしこんなクソ会社に10年も在籍した人がいました。
名前は「ヒカル」さん。
役職はマネージャーで会社のNO2。
私の直属の上司だった人です。
ヒカルさんは大学を卒業後、
この系列会社の一つに入社。
そして潰れては増えるこのクソ会社が
潰れる度に他の系列会社へと、
各地を転々としていた人でした。
🔻こんな待遇の会社に10年です・・・・。
①個人事業主扱い(正社員ではない)
②完全歩合制度(固定給が無い)
※1件千円程度の報酬:月に5万稼げればむしろ有能
③月の休みは2日程度
※土曜日出勤:日曜日も会社のイベントに強制参加
④交通費は出ない。
⑤社用車が無い
※移動は自家用車
⑥1日14時間の労働
しかし何よりもこの会社は、
仕事内容が過酷なのです。
1日120件程のお宅を飛び込み営業するのですが、
お客さんから「うるせえ!」
「帰れ!」「迷惑なんだよ!」
などと暴言を言われる事もあります。
(言われても仕方ないことなんですけどね)
玄関先で粗略な扱いを毎日毎日、受け続けるのです。
毎日毎日、心がドンドン削られていくのです。
夏は炎天下の中をひたすら歩き続けます。
なかには熱中症で倒れる者もいます。
冬は寒い。肌に突き刺さる風がキツイ・・・・。
でもそんな過酷な労働をしても、
貰える給与はマネージャーであっても
十数万円程度・・・。
完全歩合制なので契約が0なら給料も0
「今日もし契約がとれなかったら・・」
毎日そんな事に悩まされます。
そんな会社で10年・・・
もうスゴイ・・・・と言うよりは、
狂っていると思う。
この会社は誰でも採用する会社なので、
しばしば刑務所から出てきたばかりの、
元強盗犯やら暴行犯やら薬中やら、
そういう元犯罪者も多かったのですが・・・
それでもこのヒカルさんより、
闇が深い人間はいませんでした。
しかしヒカルさんは、
その深い闇と裏腹に非常に誠実で優しい人でした。
例えば、
会社のイベントで出たゴミを私が持ち帰ろうとすると、
「おい、無理すんなよ半分持つよ?」
とすぐ声をかけてくれるのです。
そんな風にどんな小さな事でも困っている社員がいると、
必ず声をかけてフォローしてくる人でした。
みんなが彼を慕っていました。
とても思いやりがある人だったのです。
「なぜ彼が10年もこの会社に居続けているのか?」
それは、それを知る誰もが内心疑問に思っていました。
結論、ヒカルさんは辞めないのでは無く、
辞められなかったのだと思います。
なぜなら、従業員が辞める時にこんな事を言うからです。
「私はダメでしたけどヒカルさんなら
絶対成功しますよ!応援してます!
「ヒカルさんが起業したら絶対呼んでくださいね!」
なんてね。
私も辞めていく部下にそう言われた事が何度もあります。
これは会社の社長が
「がんばれば独立支援して!成功者にしてあげるよ!」
そんなような事を毎日言っていたからなのです。
みんな悪気は無いのですが、
辞める時に自分たちの夢や思いを
残った従業員に託そうとする事があるのです。
そして恐らく・・・・
ヒカルさんが一番の辞められない理由は、
死んでしまった従業員が何人もいるからだと思います。
自殺もある。
ですが一番の死亡の原因は
「健康診断が無いから」です。
笑っちゃうような理由ですよね?ハハ・・・・
なにせ個人事業主扱いですからね、
自分の病気に気づけ無い。
まぁ・・・・どうせ病院に行くお金も無い。
休みも無い。
忘れられないある一人の同僚は、
出勤する度に、
だんだん顔色が悪くなっていきました。
そして突然会社にこなくなる。
気づけばもう手遅れな状態でした。
そしてヒカルさんがお見舞いに行くと、
病室でドラマチックにこう言われるのです。
「私の分まで頑張って下さい、
必ず成功して下さいね」
なんてね・・・・・。
あとあとヒカルさんは、
目に涙を浮かべながら話てくれました。
しかし・・それはまるで呪いのようなモノにも思えました。
私もいまだに死んでいった同僚の事が忘れられません。
10年間ヒカルさんは、
そういう思いを受け止め続けてきたのでしょう。
人の痛みに人一倍敏感な人だったのです。
ヒカルさんは正常だったのだろうか?
愚痴を絶対に言わないヒカルさんが、
長年務めた同僚が辞めた時に、
一度だけポツリと私にこう言いました。
「なんでみんな辞められるんだ・・・・?
これまで辞めていったヤツの気持ちはどうなるんだ?」
なんだか・・・
ヒカルさんの心の闇が垣間見えたようで、
恐ろしく感じました。
その言葉を思い出して考えると・・・・
かけられた呪いが強すぎたのだと思います。
もうこのクソ会社を起業して、
このクソビジネスで成功する以外の未来を見ていないのです。
本人も言っていました、
「この、みんなに夢を与えるビジネスがしたいんだ」と、
「他のビジネスがしたいわけじゃない」と
それで10年・・・・・・10年ですよ。
10年間、苦しい生活の中でノウハウを学び、
会社の支援を受けて独立するために・・・10年。
そんな彼は、
今既にこのクソブラック会社を起業しています。
なぜでしょうかね・・・・・
自分の部下を死に追い詰め、
多くの人々を苦しめ続けた会社を経営して、
それをさらに全力で増やし続けているのです。
「みんなに夢やチャンスを与えたい」
と、そう言って増やし続けるのです。
虫の卵や病気のように
誰よりも仲間や部下を思い、
誠実で優しかった彼が、
今では諸悪の根源になっているのです。
3年間、彼の下で働きましたが、
彼の誠実さや、
思いやりの心にウソはなかったと思います。
人はどこまでも、
どこまでも矛盾し続ける生き物ですよね・・・。
おしまい