近年、ブラック企業という言葉を盛んに耳にする気がします。ここでは私が知る限り一番最悪なブラック企業を紹介したいと思います。低賃金、長時間労働、補償なしアリ地獄のようなこの会社の話をぜひ最後まで聞いて下さい。
求人雑誌にあった魅力的な求人の内容
会社の倒産の知らせをうけ、私は求人雑誌で職探しを始めました。
求人雑誌を開くと、こんな魅力的な募集が目に飛び込んできた。
- 月収25万円
- ボーナス4ヶ月分
- 学歴不問
- 海外研修有り
- 20代中心
- まだ起業したばかりのベンチャー企業です。
- アットホームな会社です。
うわぁ給料とボーナス・・すごい!
ベンチャー企業?何かよくわからないけどカッコイイ!
学歴不問か・・・もしかしたら受かるかも?
私もこの頃はバカピュアだったのだ。
高卒で警察官をクビになり資格も漢検3級しかなかった私はこの求人に飛びついた!
ここが「地獄の入口」とも知らずに。
地獄の入り口:面接の開始
面接に向かうと、その会社はオフィス街のビルの1室にあった。
小奇麗なオフィスに入ると25歳前後だろうか?
2人の若い男性が笑顔で出迎えてくれた。
二人は「はじめまして!」と言うと握手を求めてきた。
ドキッとしたが、ガチガチに緊張した私はそのフレンドリーな対応に凄くホッとしたのを覚えています。
ちなみに「なぜ握手をするんですか?」と後日聞くと
「うちは外資系企業だからさ!」
と笑顔で言われました。
カッコイイ!!
私はとびっきりバカピュアだった。
こうして面接前に会社の説明を受ける運びになった。
どんな仕事をするのか?
面接の前にこんな説明を受けた。
入社後しばらくは、営業を覚えるために「飛び込み営業」をしてもらいます。
なぜか?
「全ての経営者は営業をマスターしている!」
「なのでまず基礎である営業力を現場で身につけて欲しい!」
「営業を覚えたら次のステップにすすもう!」
いつまでも飛び込み営業をするわけじゃない、営業を覚えたら次は人材マネジメントを学んで欲しい!そういう教育プログラムで本当にやる気のある人材を育てていきたいとかうんたらかんら・・・・・・・・・・・・・・・・・(略)
最初に言っておきたい、全部デタラメです。
この会社にはステップアップなんていうシステムはありません。
永遠に「飛び込み営業」をさせるだけの会社です。
飛び込み営業でコミュ障が治る?
何せコミュ障が原因で警察官をクビになった私である。
「自分のコミュ障を治すにはピッタリの会社なんじゃないか?」と思った。
これがこの最強のブラック企業に3年も勤める原動力となる。
社長による最終面接「死の2択」
紹介された社長はさっきの25歳位の若い男性の片方だった。
これには驚いた!!カッコイイ!!
社長さんはこう切り出した。
「実は求人雑誌で正社員の募集もしているんだけど・・歩合制で稼げる育成プログラムの募集もしているんだよ。」
ん?育成プログラム?カッコイイ!!
社長の熱い理念
社長さんは自分も低学歴で苦労した事を語り始めました・・・。
貧困の中で育ったこと、ビッグになりたいと必死で勉強した事。
そして「就職や生活に困っている若い人を育てたい!」と思って起業したのだと、熱く語り始めました。
※完全歩合制とは?
(基本給や保険等の保証が一切無く、契約した分のお給料しかもらえない契約形態の事です。)
社長はこう言います、育成プログラムは「完全歩合制」なので契約をとった分しかお給料はもらえないけど、最高の人材を育てるしつもりだ!ぜひ参加して欲しい。
私は感動しました。
こんなに素晴らしい経営者さんがいるなんて・・・・・。
当然私はここで正社員ではなく、歩合制の「育成プログラム」を選択して
地獄へ真っ逆さまに落ちていきます!!!!!!!!
結局どういう会社で何を目的としているのか?
まず社長は「正社員の募集もしている」と言っていましたが、これはウソです。
会社としては人件費がかからない安くて便利な「完全歩合制の社員」が欲しいのです。
もし面接で正社員を選んだ場合100%落とします。
好条件の正社員募集の求人で人を呼び込み、面接で「歩合制の育成プログラムいいよ~」とすすめて雇うのです。
現に、私がいた3年間で正社員で登用された社員は一人もいません。
なぜ2択で選ばせるのか?
社長は面接の最後こう聞いてきます。
「正社員の募集と完全歩合の育成プログラム、どっちにしますか?」
選択させる理由の一つはクレーム回避のためです。
もし歩合制キツイ!ヒドイ!と怒られても
「自分で選んだんでしょ?」と言えるワケですね。
二つ目は、求人では正社員で募集をかけているので(釣り針として)表向きは正社員も募集していましたよ!というテイにする必要があったのです。
しかし面接に来ると、「育成プログラム(完全歩合制)」のゴリ押しです。
とにかく会社の売上は求人広告のお金に費やされます。
広告の効果は凄まじく、新入社員が毎月10名ほど入社してきました。
(入れ替わりで多くの人が辞めますが)
なぜみんな「育成プログラム」で入社してしまうのか?
勧誘は「育成プログラムなら月収50万も夢じゃないよ?」
「1年もやれば飛び込み営業から離れて、管理者として人材育成を任せたいんだよ。」
などなど、凄く美味しい話ばかりをしてきます。
しかし、わかって頂きたいのは
これは「美味しい話に頭の弱い人が釣られた」というだけの話ではありません。
その時代は就職氷河期で、若者はみな生活に苦しんでいました。
この会社はそういう人の弱みにつけこんだ悪徳商法だったわけなんです・・・。
給料は多くても12万円前後
多く貰えたとしてもせいぜい、給料は月に12万円前後といった所です。
ここからさらに、国民健康保険料や年金や税金を支払わなければならないので(払えるわけがないのだが)従業員は強烈に苦しい生活を強いられることになります。
「そんな会社やめればいいじゃん?」
そう思う方も多いでしょう。
しかし近年ブラック企業での自殺が相次いでいる事を思い出して下さい。
辞めたくても辞めれない心理状況に追いやられてしまう人も多いのです。
少なくともこの営業会社は「辞めさせないための徹底した洗脳教育」を行っていました。
その洗脳方法もゆっくりお話していきたいと思います。
さいごに
このブラック営業会社は、多くの若者を露頭に迷わせただけではありません。
中には耐えきれず死んでしまった者もいます・・・。
自分で選んだ会社だから自己責任だろう。という意見もあるかもしれませんが、
苦しんでいる人間達を間近で見続けた私には、どうしてもそう簡単に割り切る事は出来ないのです・・・・。
ここから、そんな私が3年間在籍した最悪のブラック企業のお話を書いていこうと思います。